堂々と自分の意見を述べている人を見たら羨ましく思いますよね。その人が優秀に見えるし、高い能力があるのだな、と思ってしまいます。自分は、優秀でもないし、能力もない。間違った意見を言って恥ずかしい思いをするのも嫌だ。でも、そもそも「意見」に正しい間違いは、ありません。意見は、その人の考えなので誰も否定しようがないのです。でも世の中には、SNSで意見を言って炎上してしまったというのはよくある話。気軽に投稿したら、「あなたの意見は間違っている!」と、ネガティブな反応にあふれ炎上したっていう話をよく聞きます。でもよく考えてください。世の中には正解のないこともたくさんあるのです。正解があるのは、数学や物理の法則ぐらいです。「住むなら賃貸か購入か」、「消費税は導入すべきか廃止すべきか」、「延命治療は是か非か」。これらの問題には答えはありません。あるのは個人個人の意見、考え方だけです。たとえ自分の意見と異なってもそれを否定することは出来ないのです。なぜなら答えがないから。この本を読むことで、意見とはなんなのか、そして自分の意見を持つことがいかに大事なことなのか、がストンと腑に落ちます。実は堂々と意見を言えている人と、言えなかった人の差は、意見の本質について知っているか、どうかの差だったのです。
ちきりんの自分の意見で生きていこう
本書は、作者ちきりんが「これからの世の中を生き抜くために必要とされる根幹の力」について解説するシリーズの4冊目の完結作品です。これまで、「自分のアタマで考えよう」、「マーケット感覚を身につけよう」、「自分の時間を取り戻そう」を出版し、この4冊目を出版することでちきりんが伝えたい、論理思考、マーケット感覚、手に入れたい生活を効果的に手に入れる生産性、そして自分の意見を持つ、ことで自分の幸福度を上げることができる、と述べています。とりわけ、本書「自分の意見で生きていこう」は、ちきりんの発信活動の根幹をなしている考え方が詰まった本です。

世の中は問題であふれている
世の中はあらゆる問題で溢れかえっています。目の前に問題が現れたとき、人は何とか答えを探そうとします。そのように思うのは、学校で答えを導き出す教育を長年されてきたからです。しかし、問題には、「正解のある問題」、「正解のない問題」があるのです。前者は、過去の歴史的事実や数学的法則。後者は、生死にかかわることや生き様、よりよい社会システムなどです。「正解のない問題」にあるのはその問題に対する個々の意見。○(正解)、×(不正解)はなく、「様々な意見」があるだけです。
そして「様々な意見」は、人類の存続に大きな寄与をしてきました。仮に「様々な意見」がなく、「正解となる答え」だけががあれば、すべての人がその方向に進み、多様性が失われることで歴史上のどこかで選択を誤り、人類が滅び去っていたに違いありません。
「反応」と「意見」
FB(フェイスブック)やツイッター、インスタグラムのようなSNSには他者の投稿に「いいね」や「コメント」を残す機能があります。「いいね」は、他人の意見に対し、明確な自分の意見を表明しなくても気軽に「いいね」で反応することができます。投稿者の意見に「賛成」なのか「反対」なのか、(「いいね」なので賛成と想定されますが)明確な意思表示とは言えません。本当の意味で意思表示をするためには自分の意見を持つ必要があり、そのためには自分のポジション(立ち位置)を明確にする必要があるのです。
ポジジョンとは、ある意見に対し、「賛成」なのか「反対」なのかを表明すること。ポジションをとるためには2つの過程を踏まなければいけません。1つめは、対象となる意見を充分考え抜くこと。2つめは、「賛成」か「反対」かを自ら選択し決定することです。他人がそういったからとか、本当は「賛成」だけど、皆が「反対」するから自分も「反対」では、自らポジションを取ったとは言えません。自分の心に正直でなければ意味がないのです。
SNS上での人格
インターネットができてスマホが登場し、誰もが気軽にSNSを利用できるようになりました。そのことで「承認欲求」という新しい言葉を目に耳にすることが多くなりました。承認欲求とは、自分の発信に対し多くの読者から「いいね」や好意的な「リプライ」もらいたいとか、フォロワーを獲得したい、と願うことです。しかしながら現実は数多くの発信をしたからと言って多くのいいねをもらったりやフォロワーを獲得したりすることは出来ません。その一方で、いとも簡単(のように見える)に何千というフォロワーを獲得する人もいます。この差はどこから来るのでしょうか。実は、フォロワーを多く獲得できる人は、その人となりが他者に伝わる発信をしているのです。「この人はどんな人だろう」ということが投稿内容から良く伝わる人ほど多くのフォロワーを獲得するのです。そして「この人はこんな人です」と伝わってくる発信とは、その人の意見が表明されているのです。自分の意見を言うことができる人材は企業としても採用したい。実際そのことに気がついた一部の企業は、採用時就職希望者のSNSの投稿をチェックしたりアカウントを履歴書に書かせたりして採用の参考にしているそうです。
自我の確立
一方、他人からの承認欲求を求める前に必ず押さえておきたいこととして「自己の肯定」があります。他者から承認されることばかりに目がいってしまうと、日々フォロワーの数に一喜一憂し、フォロワーの数を増やすこと自体が目的化してしまします。まず、自分が「承認される対象」として自我が確立していなければ外部からの承認は得られにくくなります。ありのままの自分をありのままに理解し、肯定することで発信する意見が束となって他者からみてその人となりがよく伝わるようになるのです。
リーダーシップについて
自分の意見を持つことは組織やコミュニティ、さらには家庭においても重要です。例えば会社の会議で黙っている、ポジションを取らず(賛成とも反対ともいわず)ただ評論する、批判する、心配ばかりする、人をたまに見かけます。このような人ばかりの集まりでは議論が前に進みません。夫婦の会話でも同じ。相談を持ち掛けられたとき、「君にまかせるよ。好きにしていいよ」というと、相手は真剣に考えてくれていないと思い喧嘩になります。会社の会議にせよ、家庭のパートナーからの相談にせよ、目の前の課題に対しポジションを取り、真剣に考えて意見を表明しないと存在価値がありませんし、認められません。組織のリーダーとは、ポジションが明確で自分の意見を持ち、課題に対し目標を設定して自ら解決に動く人なのです。
まとめ
自分の意見で生きていくためには、世の中には正解がある問題とない問題があることを理解すること、そして正解のない問題に対し思考を深めポジションを取って自分なりの意見を持つこと、が重要です。SNSで気軽に情報発信できる世の中になったことで、より自分の意見を持つことの価値が高まっています。日本の学校教育は、正解のある問題をより早く正確に導き出すことに重点が置かれています。しかしながらこれからは、思考を深め正解のない問題にもポジションを取って自分の意見をもつことでより一層有利に生き抜くことができます。あなたも自分の意見をもって生きてみてはいかがでしょうか。
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