構想力が劇的に高まる アーキテクト思考

モノづくりによって経済大国になった日本。世界からJapan as No.1と崇められ、時には恐れられたあの時代から30年。時代は急速に変化してきました。今世界で最も存在感を示しているのはGAFAと言われるプラットフォーマー。彼らの戦略は、デジタル化によるサービスの提供。物理的な商品開発・製造による徹底的な品質管理とは全く異なる儲けのメカニズムを利用して収益化しています。収益化の源泉は「最初に闘う場を提供」したこと。彼らの創造したプラットフォームで多くの個人が活動すればするほど彼らに収益が上がる。そんな仕組み化に成功したのです。

アーキテクスト思考とは

 アーキテクスト思考を一言で表現すると、「抽象化してゼロベースで全体構想を考えること」。建築やITの分野で使われている用語です。例えば建築の場合、物理的な建造物に加え、デザインやコンセプト、建築思想や哲学を含んだ概念になります。またITでは、コンピューターの基本原理、構造化プログラミングやプロジェクト指向が相当します。つまりアーキテクスト思考とは、個々の基本構造を統合して全体を俯瞰し、抽象化した「全体構想」的な思考です。

なぜアーキテクスト思考が必要なのか

戦後日本の高度成長の後、30年間停滞に至った大きな要因は、日本の経済システムが「全体構想」的な思考に追いついてこられなかったことが原因と思われます。つまり、大きな決まった枠組みの中での経済活動、具体的には最適化、均一化、低コスト化で経済的に成功してきましたが、デジタル時代の収益化モデルにマッチしないのです。ここを突破するためには、初めからルールを作るところから始まる「全体構想」、すなわちアーキテクスト思考が重要になるのです。

アーキテクスト思考の実践

 アーキテクスト思考を実践する時は、大きく、5つのStepがあります。

 Step0:経験やこだわりに基づくバイアスを除去することです。まっさらな目で客観的に物事を認識するのは大変難しいことです。しかし、白紙の状態から思考をスタートさせなければ、積みあがった思考に説得力は生まれません。

 Step1:具体的事業の観察。構想を練る時に市場や社会・経済環境の情報を入手する必要があるのですが、「どんな問題を解決しなければいけないのか?」といった課題・問題を設定する作業になります。

Step2:全体を俯瞰するために座標軸を設定します。Step1で設定された問題・課題の解決に向け、遠めに視野を広げて俯瞰し、抽象度の高い事象としてとらえるのです。全体の中でやること、やらないことを選別し、優先順位をつけていきます。

Step3:全体の構造を抽出しモデル化します。このステップで、解決すべき問題のボトルネックや優先順位の高い項目を洗い出し、シンプルな成功要因を見極めるのです。

Step4:Step3で抽出されたビジネスの構造や関係性、重要成功要因を具体的な構想に落とし込みます。類似性のある他の世界の例を参考にしながら進めます。

アーキテクスト思考まとめ

  • デジタル社会では、決められた仕組みの中で最適化を図る手法ではなく白紙から思考をスタートさせる「アーキテクト思考」が重要
  • アーキテクト思考をビジネスに取り入れることで新たなルールに顧客を呼び込むことが可能になり、より収益化しやすいビジネスモデルが構築できる
  • アーキテクト思考の実践は、バイアス除去、座標軸の設定、市場の観察による問題点の抽出、全体構造のモデル化、重要成功要因の見極め、のステップがある。