失敗しない早期退職の準備 失業手当の対象者と受給期間
今の会社を退職することを考えている方。次の仕事場が見つからない間、無職となり将来が不安ですよね。しかし日本は社会保険制度が充実しています。それまでが企業勤めだったら無職の期間中、様々な公的サポートが得られるのです。しかも、その内容はというと、金銭的なサポートのみならず、ビジネスパソコン講座や介護職員実務者研修などの求職者支援訓練、ハローワーク主催の各種就職セミナーなど世界的にもまれにみる充実ぶり。私も早期退職を決心した3か月ほど前からその内容を集中的に学習し、実際、支援を享受しながら退職することができたのです。この記事を読むことによって失業手当について知ることができます。今回は、失業手当の対象者と受給期間についてです。なお、失業手当受給額については、下記の記事をご覧ください。
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失敗しない早期退職の準備 基本手当(失業手当)の受給額
私のブログ「失敗しない早期退職の準備 失業手当の対象者と受給期間」では、日本の社会保険制度、雇用保険、そして失業手当をもらえる条件や期間について説明しました。 本記事では、みんなが気になる実際にもらえ ...
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雇用保険について
雇用保険とは、会社が従業員に対して掛ける義務のある保険で、従業員が失業した時に保護を受けられるようにする制度です。その内容も労働者の自ら職業に関する教育訓練や労働者が子を養育するために休業をした時、生活及び雇用の安定のための金銭的サポートなど、多岐にわたります。
労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方等に対して、失業等給付を支給します。また、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進等をはかるための二事業を行っています。
厚生労働省:雇用保険制度
会社勤めをしている時は、雇用保険料として毎月お給料から天引きされます。問題なくお勤めしている時は支払い側、いざ無職になったり、諸事情で会社をお休みしなければならなかったりした場合は、受給される側になるのです。ちなみに失業した時にもらえる給付金のことは失業保険、失業手当、失業給付、雇用手当など、色々言われますが、正しくは「基本手当」。でもこの記事では、失業手当と呼びますね。受給手続きはハローワークで行います。
日本の社会保険制度について
さて、ここで改めて日本の社会保険制度の全体像について整理したいと思います。
図にありますように、日本の社会保険制度は、社会保険と労働保険があり、前者は、健康保険、厚生年金保険、介護保険、後者は、雇用保険、労災保険に分かれます。

今回は、失業した時に重要となる雇用保険について深堀していきたいと思います。
日本の雇用保険制度について
ハローワークのウェブページには、雇用保険制度について、下記のような概要説明が掲載されています。
雇用保険は、
1.労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合及び労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合及び労働者が子を養育するための休業をした場合に、生活及び雇用の安定並びに就職の促進のために失業等給付及び育児休業給付を支給
2.失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図るためのニ事業を実施する
雇用に関する総合的機能を有する制度です。
ハローワークインターネットサービス 雇用保険制度の概要
数々のサポート事業がありますが、退職した時の失業手当に相当するのが「基本手当」。条件を満たした求職活動中の求職者に支払われる手当になります。また、受給対象者は、「一般被保険者」、「短期雇用特例被保険者」、「日雇労働被保険者」、「高年齢被保険者」などがあるのですが、今回は、普通のサラリーマンが退職した場合の「一般被保険者」が受ける「基本手当」いわゆる失業手当についてご説明いたします。

退職を決意したその日から行う準備
さて、退職を決意された方は様々な事情を抱えていますよね。でないと、わざわざ退職する必要もなく、サラリーマンとして定年まで、さらには再雇用制度を使って65歳ぐらいまでお勤めできたはず。退職を決意したその日からまず、取り組むべきは社会保険制度の理解。特に失業手当の受給条件はしっかり事前にチェックしておきましょう。
雇用保険のサポートを受けることができるかどうか
ご自身が、雇用保険によるサポートを受けることができるかどうかを知ることは重要です。注意すべきは下記の理由であれば雇用保険からのサポートは受けることができません。
- 貯金が充分蓄えられたので優雅な余生を送る。仕事をする気なし。いわゆるFIRE
- 転職先がすでに決まっている
- 自分で事業を興す
- パート、アルバイト中(ただし条件によって失業手当受給可)
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 病気やケガですぐには就労できない(雇用保険ではなく、健康保険のサポートになります)
一方、下記の場合は、雇用保険からのサポートを手厚く受けることができますので、是非この記事を読み進めてください。ただし、「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があり、職業に就けず、積極的に求職活動を行なえる状態にある」ことが条件です。
- 会社が倒産した
- 会社にいきなり解雇された
- 残業、パワハラが原因で退社せざるを得なかった
- 心身の病気、ケガ(全く働けないわけでもない程度)
受給者の種類について
まず、大前提として失業手当を受給できる条件は、下記の2点になります。
1.失業(離職し、就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にあること。)していること。2.離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あること。
ハローワークインターネットサービス(よくあるご質問(雇用保険について)
ただし、2.の場合、「倒産・解雇等により離職した方については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可」となります。
失業手当を受給できる人は、以下に分類されます。
一般離職者
特定受給資格者
特定理由離職者
就職困難者
それぞれどういった違いがあるのか見てみましょう。
一般離職者について
「一般離職者」とは、65歳未満でかつ、元の会社よりもよい仕事内容・待遇を求め転職を希望する離職者です。純粋な自己都合による退職で、受けるサービスも最低限です(といっても充実しています)。会社に退職希望を告げると、「一般離職者」として処理される場合がほとんどです。
特定受給資格者について
「特定受給資格者」とは、本人の意志とは関係なく離職せざるを得ない場合が相当します。主な理由は、会社の倒産や解雇、さらには長時間労働が原因で転職を決意したなどのケースですが、条件が細かく設定されていますので、下記表をご確認ください。

特定理由離職者について
自己都合による退職であっても正当な理由がある場合は「特定理由離職者」になります。特定理由離職者の条件は、下記表をご確認ください。

就職困難者について
最後に「就職困難者」ですが、以下の条件により就職が困難な人が該当します。受給要件も離職前「1年間」に被保険者期間が通算して「6か月以上」に緩和されます。
- 身体障害者(身体障害者手帳を持っている人)
- 知的障害者(療育手帳を持っている人)
- 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳を持っている人、ただし例外もあります)
- 刑法等の規定により保護観察に付された方
- 社会的事情により就職が著しく阻害されている方
失業保険を申請する前に、まずは自分が「就職困難者」に該当しているのかどうかを調べる必要があります。それを証明する各種手帳もしくは、医師の診断書(てんかん、躁鬱病、統合失調症に該当する人)を準備しておかなければいけません。ただし、医師の診断書で充分かどうかは住んでいる地域を管轄しているハローワークによって考え方が異なるという情報もありましたので、最寄りのハローワークにご相談ください。
受給期間について
失業手当を受け取ることのできる期間は、離職者分類、年齢、被保険者であった期間によって変わります。これを所定給付日数といいます。
一般離職者について

特定受給資格者及び一部の特定理由離職者※について
※一部の特定理由離職者:特定理由離職者のうち「特定理由離職者の範囲」の”期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)"に該当する方については、受給資格に係る離職の日が2009年3月31日から令和7年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。

就職困難者について

所定給付日数の確認方法
勤続期間30年自己都合:私の場合です。私は、本来であれば2026年2月に定年退職の予定でした。しかしながら思うことがあって早期退職を決意。今の会社には31年間在籍。雇用保険の被保険者としては、20年以上になります。つまり、一般の離職者における、被保険者であった期間が20年以上という条件に相当するので150日。これが、私の受給期間です。
雇用保険のまとめ
- 社会保険制度の労働保険に雇用保険がある
- 雇用保険は、会社が従業員に対して掛ける義務のある保険で、従業員が失業した時に保護を受けられるようにする制度
- 指定の期間雇用保険の被保険者であること、就職しようとする意思といつでも就職できる能力があり、職業に就けず、積極的に求職活動を行なえる状態にあれば、失業手当を受給できる
- 一般離職者、特定受給資格者、特定理由離職者、就職困難者により受給期間が異なる
- 自身がどの区分に属するかを見極めることが重要
失業手当の支給額については、下記の記事をご覧ください。